
フロン点検の対象となるのは、業務用の冷凍冷蔵機器、空調機器、冷凍空調機器です。具体的には、定格出力が7.5kW以上(圧縮機電動機の定格出力)の機器が簡易点検の対象となります。これには、スーパーマーケットの冷凍・冷蔵ショーケース、オフィスビルの中央空調システム、工場の生産ライン用冷凍機などが含まれます。ただし、家庭用エアコンや家庭用冷蔵庫は対象外となります。
【具体例】
レストランのキッチンに設置された業務用冷蔵庫(出力10kW)は点検対象となりますが、同じ店舗内の従業員用の家庭用冷蔵庫は対象外です。
2. フロン点検の頻度と記録の保管義務について
フロン点検は、機器の規模によって点検頻度が異なります。すべての対象機器について3ヶ月に1回以上の簡易点検が必要です。さらに、フロン類の充填量が7.5kg以上の機器は、専門家による定期点検が必要となり、充填量によって年1回または半年に1回の点検が求められます。点検記録は、機器廃棄後も3年間の保管が義務付けられており、違反した場合は罰則の対象となる可能性があります。
【具体例】
ショッピングモールの中央空調システム(フロン充填量50kg)の場合、3ヶ月に1回の簡易点検に加えて、年2回の専門家による定期点検が必要です。
3. フロン漏えい量の算定・報告が必要なケース
フロン類算定漏えい量報告・公表制度において、事業者は年間のフロン類の漏えい量を算定し、一定量以上の漏えいがある場合には国への報告が必要となります。具体的には、事業者全体での年間フロン漏えい量が1,000t-CO2以上となった場合が対象です。この算定には、業務用エアコンや冷凍冷蔵機器などの第一種特定製品からの漏えい量を全て合算します。算定方法は、機器の整備時に確認された充填量と回収量の差分から計算されます。また、複数の事業所を持つ事業者の場合は、法人単位で算定を行う必要があります。漏えい量の報告は、毎年7月末日までに前年度分の漏えい量を所管の経済産業大臣および環境大臣に提出しなければなりません。
具体例:
・スーパーマーケットチェーンA社の場合
全国300店舗の冷凍冷蔵ショーケースと空調機器からの年間漏えい量が1,200t-CO2となり、報告が必要となった。
・工場B社の事例
複数工場の生産ライン冷却装置と事務所空調からの漏えい量が980t-CO2で、報告義務の対象外となった。
フロン排出抑制法に基づく点検・管理は、地球温暖化防止の観点から極めて重要な取り組みです。特に、定期点検の実施や漏えい量の適切な算定・報告は、フロン類の排出削減に大きく貢献します。事業者は、機器の適切な管理と記録の保持、そして必要に応じた報告義務の履行が求められます。また、漏えい防止の取り組みとして、定期的な機器の点検や、老朽化した機器の計画的な更新も重要です。フロン排出抑制に向けた取り組みは、企業の環境負荷低減活動の一環として、今後ますます注目されることが予想されます。さらに、脱フロン化への移行を見据えた設備投資計画の策定も、長期的な視点で検討すべき課題となっています。持続可能な社会の実現に向けて、各事業者が責任を持って取り組むことが期待されています。